2010年1月21日木曜日

「コメ戸別所得補償制度の落とし穴」の隣にも落とし穴

1月20日の日経新聞夕刊で、「コメ戸別所得補償」の解説記事が掲載されました。これまでも農業問題を真摯な姿勢で取材されてきた編集委員・樫原弘志さんの「ニュースの理由」欄です。
感想含めて、思いつきのメモがきとして。

①農政の重大なほころび

日経新聞の記事は、今回のモデル事業は食料自給率向上の効果は乏しいだろうという、冷静な調査分析記事になっていて、とてもわかりやすい内容です。食料自給率向上のために米粉用米や飼料用米の作付けを誘導する補助金体系が、皮肉にも財源不足の壁にぶつかることを示唆しています。

2010年度はあくまでもモデル事業ですが、2011年度から本格的に実施される制度設計の際には、支払い対象となる農家を吟味しなければなりません。たとえば農業を職業として選択している主業農家約35万戸程度に絞り込む。国際競争力を高めるための構造改革も必須。

夏の参院選で政策論議のテーマになることを期待しますが、補助金と引き換えに票田を確保したいのは自民も民主も同じで、必要以上に弱者を支援する形を作りたがる共産党も言い出せない。すると、新しい政党の登場を待つしかないのでしょうか・・・。

このあたり、さらに踏み込んだ樫原さんの記事がもっと読めるようになるといいのですが・・・。

※農家の分類について
http://www.maff.go.jp/j/use/tec_term/toukei.html


②食料自給率向上キャンペーンに振り回されるな

食料自給率を政策の目標にするなら金額ベースで統計を発表するべきです。戦後の食べ物がない時代でもあるまいし、カロリーベースで議論してどうする。

2011年度から本格導入される戸別所得補償制度の設計では、コメ農家だけでなく、野菜、畜産農家など農業全体の補助金政策の見直しが始まります。その議論の過程で、ようやくカロリーベースで食料自給率を計算し続ける現在の統計手法の矛盾について一般に理解が進み、訂正せざるを得なくなるでしょう。

自給率向上に貢献できないカロリーの低い「野菜」。
飼料は輸入比率が高いため計算上生産するほど自給率が下がる「畜産」。
食べれない!「花」。

これらを生産している農家は縮小?

政策ではもちろん縮小するとはいっていませんが
カロリーベースを前提にして
自給率向上キャンペーンをしている限り、
結果的に論理矛盾を起こすということです。

致命的な誤解を与える恐れと、関係農家のプライドと
意欲を削いでしまうということです。

食料自給率の目標とそれを達成させるための農業のあり方について議論している「食料・農業・農村政策審議会」では、同時に社会インフラとしての農村の多面的な可能性を引き出すための基本政策の策定作業も進めています。
審議会の名称となっている3つの言葉、食料・農業・農村。今のところ、それぞれかみ合っていないように見えます。

※「食料・農業・農村政策審議会企画部会」公表資料http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/17/index.html


③複合的な政策矛盾

・財政破綻リスクを抱えたコメ戸別所得補償制度
・危機感煽るための食料自給率向上原理主義
・企業参入を過大評価する農村振興策

互いに相手を打ち消すような3色のインクが画用紙に垂らされている感じ。今後、環境分野と高齢者を中心とした福祉分野が加わり、画用紙の上はますます複雑な模様になっていくでしょう。


PR通信社 イーネット・ブレーン

その先を目指すコミュニケーション戦略
http://www.enb-inc.jp/

0 件のコメント: