1月20日の日経新聞夕刊で、「コメ戸別所得補償」の解説記事が掲載されました。これまでも農業問題を真摯な姿勢で取材されてきた編集委員・樫原弘志さんの「ニュースの理由」欄です。
感想含めて、思いつきのメモがきとして。
①農政の重大なほころび
日経新聞の記事は、今回のモデル事業は食料自給率向上の効果は乏しいだろうという、冷静な調査分析記事になっていて、とてもわかりやすい内容です。食料自給率向上のために米粉用米や飼料用米の作付けを誘導する補助金体系が、皮肉にも財源不足の壁にぶつかることを示唆しています。
2010年度はあくまでもモデル事業ですが、2011年度から本格的に実施される制度設計の際には、支払い対象となる農家を吟味しなければなりません。たとえば農業を職業として選択している主業農家約35万戸程度に絞り込む。国際競争力を高めるための構造改革も必須。
夏の参院選で政策論議のテーマになることを期待しますが、補助金と引き換えに票田を確保したいのは自民も民主も同じで、必要以上に弱者を支援する形を作りたがる共産党も言い出せない。すると、新しい政党の登場を待つしかないのでしょうか・・・。
このあたり、さらに踏み込んだ樫原さんの記事がもっと読めるようになるといいのですが・・・。
※農家の分類について
http://www.maff.go.jp/j/use/tec_term/toukei.html
②食料自給率向上キャンペーンに振り回されるな
食料自給率を政策の目標にするなら金額ベースで統計を発表するべきです。戦後の食べ物がない時代でもあるまいし、カロリーベースで議論してどうする。
2011年度から本格導入される戸別所得補償制度の設計では、コメ農家だけでなく、野菜、畜産農家など農業全体の補助金政策の見直しが始まります。その議論の過程で、ようやくカロリーベースで食料自給率を計算し続ける現在の統計手法の矛盾について一般に理解が進み、訂正せざるを得なくなるでしょう。
自給率向上に貢献できないカロリーの低い「野菜」。
飼料は輸入比率が高いため計算上生産するほど自給率が下がる「畜産」。
食べれない!「花」。
これらを生産している農家は縮小?
政策ではもちろん縮小するとはいっていませんが
カロリーベースを前提にして
自給率向上キャンペーンをしている限り、
結果的に論理矛盾を起こすということです。
致命的な誤解を与える恐れと、関係農家のプライドと
意欲を削いでしまうということです。
食料自給率の目標とそれを達成させるための農業のあり方について議論している「食料・農業・農村政策審議会」では、同時に社会インフラとしての農村の多面的な可能性を引き出すための基本政策の策定作業も進めています。
審議会の名称となっている3つの言葉、食料・農業・農村。今のところ、それぞれかみ合っていないように見えます。
※「食料・農業・農村政策審議会企画部会」公表資料http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/17/index.html
③複合的な政策矛盾
・財政破綻リスクを抱えたコメ戸別所得補償制度
・危機感煽るための食料自給率向上原理主義
・企業参入を過大評価する農村振興策
互いに相手を打ち消すような3色のインクが画用紙に垂らされている感じ。今後、環境分野と高齢者を中心とした福祉分野が加わり、画用紙の上はますます複雑な模様になっていくでしょう。
PR通信社 イーネット・ブレーン
その先を目指すコミュニケーション戦略
http://www.enb-inc.jp/
2010年1月21日木曜日
2009年12月19日土曜日
「百姓」とは何か その2
農政の動きが激しくなる中、
金融機関向け専門誌への関連記事の出稿や
農業ビジネス専門誌の作業に追われています。
最近改めて圃場を見たり、
農業経営者の方に会うたびに
感じること、それは「誇り」。
農村社会への憧憬と
食文化の楽しさだけを追い求める
「ひるどき日本列島」など
テレビに映し出されてきた世界とは
一線を画した真剣勝負の
零細・中小企業、ベンチャー企業の匂いがする。
網野歴史学が古文書で再会した
江戸時代の“百姓”たちは
今も生きているのだと思います。
いまさら「農商工連携」なんて言葉を使うけど、
その連携を政策的にずたずたにしてきたのは
いったい誰だ。
自分が農家の経験がないもんだから
最近、恥ずかしい。
僕が子供の頃、農家の倅が、
農業を恥ずかしいと言っていたっけ。
これからは「商工優位」の農商工連携ではなく
「農優位」の農商工連携。
企業が安直に圃場に進出してくる前に、
農業経営者たちが起業家として
経済のど真ん中に攻め込んでいってもらいたい。
それが江戸時代から続く
日本の“百姓”の姿だと思うのです。
PR通信社 イーネット・ブレーン
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金融機関向け専門誌への関連記事の出稿や
農業ビジネス専門誌の作業に追われています。
最近改めて圃場を見たり、
農業経営者の方に会うたびに
感じること、それは「誇り」。
農村社会への憧憬と
食文化の楽しさだけを追い求める
「ひるどき日本列島」など
テレビに映し出されてきた世界とは
一線を画した真剣勝負の
零細・中小企業、ベンチャー企業の匂いがする。
網野歴史学が古文書で再会した
江戸時代の“百姓”たちは
今も生きているのだと思います。
いまさら「農商工連携」なんて言葉を使うけど、
その連携を政策的にずたずたにしてきたのは
いったい誰だ。
自分が農家の経験がないもんだから
最近、恥ずかしい。
僕が子供の頃、農家の倅が、
農業を恥ずかしいと言っていたっけ。
これからは「商工優位」の農商工連携ではなく
「農優位」の農商工連携。
企業が安直に圃場に進出してくる前に、
農業経営者たちが起業家として
経済のど真ん中に攻め込んでいってもらいたい。
それが江戸時代から続く
日本の“百姓”の姿だと思うのです。
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2009年11月9日月曜日
球根と切り株
球根の植え付けをしたいという母のリクエストにお応えして、今週末も実家に立ち寄りました。
小さな庭のプランターをひっくり返しながら鼻歌混じり。来年の春まで元気でね、それまでゆっくりお休みなさい、とコロンコロン。
作業を進めると、母から突然、新たなリクエストが。
「前から気になってたんだけど、庭の奥の切り株なんとかならんかねえ・・・もう何年も経ってるから根は弱っとると思うよ。」
赤いチューリップの植え付けが終わって庭の隅へ。 大きなシャベルを使って掘り始めると、これがなかなか手ごわい。切り株の周囲を掘り起こし、いざ穿り出そうとすると、根は土を持ち上げながら抵抗を繰り返しました。
こりゃちょうどいい運動だよと、やせ我慢をしていたものの、根っこの根性にはかないません。大汗でメガネも滑り落ち、やっとこさ堀り出した時には、胃がよじれるような疲労感が全身に広がりました。
後片付けは、また来週ということで・・・
開拓で入植した昔の人たちは、延々とこれを繰り返していたのでしょうか。石ころのない庭でさえ、まともな手入れができない現実に、しばらく立ち尽くしました。
先月、取材でお邪魔した豊橋の農家では、80歳を過ぎる親父さんが、畑の崖っぷちに石ころを積んで圃場の手入れをしていました。戦後、20ほどのあったという入植団の一員です。
親父さんは僕にこう言いました。
「今は世の中不景気で、会社員の人は大変みたいだね。若い人も仕事がないって言うし。農業やってて良かったよ。」
大地を開拓し、その後、市場開拓にも成功したこの一家は、日本一の赤シソの生産者でした。
PR通信社 イーネット・ブレーン
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小さな庭のプランターをひっくり返しながら鼻歌混じり。来年の春まで元気でね、それまでゆっくりお休みなさい、とコロンコロン。
作業を進めると、母から突然、新たなリクエストが。
「前から気になってたんだけど、庭の奥の切り株なんとかならんかねえ・・・もう何年も経ってるから根は弱っとると思うよ。」
赤いチューリップの植え付けが終わって庭の隅へ。 大きなシャベルを使って掘り始めると、これがなかなか手ごわい。切り株の周囲を掘り起こし、いざ穿り出そうとすると、根は土を持ち上げながら抵抗を繰り返しました。
こりゃちょうどいい運動だよと、やせ我慢をしていたものの、根っこの根性にはかないません。大汗でメガネも滑り落ち、やっとこさ堀り出した時には、胃がよじれるような疲労感が全身に広がりました。
後片付けは、また来週ということで・・・
開拓で入植した昔の人たちは、延々とこれを繰り返していたのでしょうか。石ころのない庭でさえ、まともな手入れができない現実に、しばらく立ち尽くしました。
先月、取材でお邪魔した豊橋の農家では、80歳を過ぎる親父さんが、畑の崖っぷちに石ころを積んで圃場の手入れをしていました。戦後、20ほどのあったという入植団の一員です。
親父さんは僕にこう言いました。
「今は世の中不景気で、会社員の人は大変みたいだね。若い人も仕事がないって言うし。農業やってて良かったよ。」
大地を開拓し、その後、市場開拓にも成功したこの一家は、日本一の赤シソの生産者でした。
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2009年9月16日水曜日
日本の農業の可能性
農業技術通信社の雑誌『農業経営者』の取材のため
琵琶湖湖畔に向かいました。
降りしきる雨は、昼過ぎには小降りに。
夕暮れ時には息を呑むほどに、空が、真っ赤に焼けました。
意外な分野に進出した、知る人ぞ知る湖畔の農業生産法人。
社長が定款に加えた新規事業は、これまでありそうでなかった
農業との相乗効果がばっちり期待できる画期的なものでした。
まだまだ見過ごしている。目を凝らして、汗かけば、見えてくる。
日本の農業はすばらしい。
10年分の勇気とエネルギーをいただいて帰路に着きました。
2009年7月8日水曜日
ホントの農業の可能性
金融機関の渉外担当者を主な読者としている『近代セールス』の取材を受けました。
発売されたインタビュー記事(NO.1086 2009年7月15日号) を先程、改めて読んで、気になリ始めたことがあります。著者校正で確認させていただいたので、編集の過程で出版社には何の落ち度もないのですが、本当にあれでよかったのだろうかと・・・。
「プロフェッショナルに聞く 中小企業への経営アドバイス~農業ビジネスはチャンスの宝庫 農業周辺にチャンスを見い出せ!~」
http://www.kindai-sales.co.jp/item/20907.htm
(本文データは読めません。興味のある方は、お買い求めください・・・。)
後悔したのは、文中で「日本の農業の現状は、注目されるようになった割に、依然として課題がある。しかし、だからこそ、改革・新規参入・起業ののり代が大きいのだ。」と結論付けたロジックです。
マクロ的な統計データだけを眺めても、農業の本当の可能性はなかなか見えてこないと、常々考えていますが、その主張を控えたのです。同時多発的に発生している新たな挑戦者たちの姿や、力のある農業経営者の方々の底力は、多くの人をなるほどと納得させるデータの裏付けをとらないと、理解してもらえないからです。
兼業農家を批判する気持ちは全くありませんが、一定水準以上の売上げを達成している専業の農業経営者の技術力の高さやビジネスセンスには、目を見張るものがあります。しかし、その因果関係を示すデータは、まだ調査規模が小さく、公の場で客観的な判断材料にするには時期尚早と判断しました。
混乱を招く可能性があるので、このブログでも触れませんが、私が気になっている数字とは、農業技術通信社が発行している月刊誌『農業経営者』の読者に対して行なったアンケートです。
(このデータが気になる方は、直接メールをいただければ幸いです・・農業技術通信社に問い合わせても、おそらく、教えていただけると思います。)
人様に伝える前に、自分の頭と足で、さらにリアルな農業の現場に迫りたい。そして、その可能性を見極めたい。一般的には注目されていない、私にとって想定外の、JAしっかりしてよ問題(隠れたサブプライム問題)の影響が、どこまで広がるか、冷静に見極めたい。さらに、既存のデータから見落としている農業の力強い兆しはないか、もう一度、吟味したい。その後、再度、伝えたい。そう考えています。
「意志あるところにしか道は拓かれない。望む未来にセオリーなし。」
この考えには一点の曇りもありません。経済事象は、意志の集積が一定以上進んだ時点で、予測不可能なスピードで変化していくものだと、歴史が教えてくれるからです。
PR通信社 イーネット・ブレーン
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発売されたインタビュー記事(NO.1086 2009年7月15日号) を先程、改めて読んで、気になリ始めたことがあります。著者校正で確認させていただいたので、編集の過程で出版社には何の落ち度もないのですが、本当にあれでよかったのだろうかと・・・。
「プロフェッショナルに聞く 中小企業への経営アドバイス~農業ビジネスはチャンスの宝庫 農業周辺にチャンスを見い出せ!~」
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(本文データは読めません。興味のある方は、お買い求めください・・・。)
後悔したのは、文中で「日本の農業の現状は、注目されるようになった割に、依然として課題がある。しかし、だからこそ、改革・新規参入・起業ののり代が大きいのだ。」と結論付けたロジックです。
マクロ的な統計データだけを眺めても、農業の本当の可能性はなかなか見えてこないと、常々考えていますが、その主張を控えたのです。同時多発的に発生している新たな挑戦者たちの姿や、力のある農業経営者の方々の底力は、多くの人をなるほどと納得させるデータの裏付けをとらないと、理解してもらえないからです。
兼業農家を批判する気持ちは全くありませんが、一定水準以上の売上げを達成している専業の農業経営者の技術力の高さやビジネスセンスには、目を見張るものがあります。しかし、その因果関係を示すデータは、まだ調査規模が小さく、公の場で客観的な判断材料にするには時期尚早と判断しました。
混乱を招く可能性があるので、このブログでも触れませんが、私が気になっている数字とは、農業技術通信社が発行している月刊誌『農業経営者』の読者に対して行なったアンケートです。
(このデータが気になる方は、直接メールをいただければ幸いです・・農業技術通信社に問い合わせても、おそらく、教えていただけると思います。)
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「意志あるところにしか道は拓かれない。望む未来にセオリーなし。」
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