2009年7月3日金曜日

「赤いハゲタカ」が日本の森を狙ってる?

昨年、日本の森林を、中国資本が水源地確保のために狙っているという噂を聞いて以来、ずっと気になっています。

5月には産経新聞でも記事になりました。

全国で、最終的に売買が成立したと確認できている案件はありません。未確認情報ばかりです。 昨年、林野庁が実態調査に乗り出したようですが、森林法では、1ヘクタール未満の山の売買は自由に認められていて、都道府県への報告義務もないため、制度上、実態を把握することができません。

農地法で農地の取引が厳しく規制されているのとは対照的に、民有林はかなり自由な取引が可能です。法律の網のかけ方に、大きな問題があるように感じます。

そんな中、日本初の森林ファンド「共有の森ファンド」を4月に立ち上げて、持続可能な事業として地域経済活性化に取り組むトビムシ。彼らの事業を全面的に受け入れた西粟倉村は、国産材の有効活用と地域の伝統・歴史・食文化を紡ぎ合わせ、移住者を受け入れる政策を進めています。その結果、岡山県で唯一流入人口が増加し続ける自治体となりました。

西粟倉村の事業を支える資金となる一口5万円のファンド。投資家は、意外にも都会の若い世代が多いとのこと。個人投資家というよりも、地域の外部応援団のような感覚です。まもなく第二次募集も予定していて、今月18(土)、19(日)には、泊りがけの投資家説明会も開かれます。これは、とても大切な試みです。 イベントでは、最近、C.W.二コルさんも推奨している山の食文化、鹿肉料理も振舞われ、地域の魅力が存分に味わえる説明会になるでしょう。

まずは、日本人自身が森林関連資源を有効活用することの大切さに早く気付かないと、取り返しの付かないことになります。日本全国の多くの森では 間伐が進んでいないため、光の届かない暗い環境下で、もやしのような木が増えています。このままでは立ち枯れや表土流出などによって、木材資源として価値を失うばかりか、水源地としての機能も低下してしまいます。

その中での、中国資本の動きは、当然といえば当然。地価の下落は、彼らからしてみれば、「これはチャンス」だと映ったとしても不思議ではありません。世界の水不足問題は深刻です。中国でも大きな政治課題となっています。

外資アレルギーが強い日本。その昔、不良債権を抱え込んだ日本の企業社会に舞い降りた欧米の「ハゲタカファンド」は、必要以上に恐れられました。今度は中国の「赤いハゲタカ」に日本の森が狙われていると、騒ぎになるかもしれません。

2007年に設立された中国投資有限責任公司(CIC)を「赤いハゲタカ」と呼ぶ人がいますが、映画でも、「赤いハゲタカ」が今上映されていて、改めて中国の巨大資本の動向に注目が集まりまじめました。
http://y8kjm.jugem.jp/?eid=1019

さて、「赤いハゲタカ」と似ていますが、全く意味が違う「赤いファンド」という言葉があります。昨年、村上龍さんのメールマガでも話題になった、「赤いファンド構想」・・・。
「赤いファンド」とは、社会主義的な理念を実現させるために多くの人が株主となり、生産手段や企業活動をコントロールする、というアイディアとして語られることが多いようです。

<村上龍さんの運営しているメルマガJMMの中での質問>
配信日:2008年12月15日
『世界経済が縮小する中、日本のメーカーでは、派遣労働者や期間工が真っ先にクビを切られているようです。わが国の雇用を維持する対策ですが、本当に可能なのでしょうか。』

少し長くなりますが、回答者の一人、三菱UFJ証券の投資銀行本部エグゼグティブ・ディレクターの三橋誠さんのコメントを引用させていただきます。
おそらく、「赤いファンド構想」の話題が初めて公になった記事だと思います。
ただし、JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。

『極端な話、経済を全て中央官僚の設計に委ね、貿易を遮断し、供給する財を完全に統制可能であれば、そこに至るプロセスの時間の問題はあったとしても、完全雇用は可能だと思います。(略)

例えば明確に企業の雇用創出機能をこそ投資の尺度とするインターナショナルなレベルでの投資ファンド(「赤いファンド」(笑)とでも命名しましょう)を組織し、一定の影響力を持つ大企業の株主総会で確実な影響を持って「雇用を護ろう」と発言する基盤を持つなど動き出す必要があります。

要は資本利益率や配当性向にしか関心を持たないまるで翼賛会のようなイメージで捉えられる株主を、もっと多様な意識を代表する党派的な株主へと変化させるべきなのです。

少なくとも、株主を資本家そのものであるとか、資本家階級を代表するものとか考えずに、寧ろ労働者階級の利益を代表する投資家、資本を創出するということは、コロンブスの卵かも知れませんが、議会制民主主義の手続きの中で、国家を掌握する努力よりは有効な闘争の回路ではないか、と思うのです。(略)』

(出展全文)
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/economy/article527_3.html

話を森林資源の問題に引き戻して考えると、トビムシの取り組む森林ファンド「共有の森ファンド」の持つ深遠な意義について改めて感心してしまいます。
トビムシの「共有の森ファンド」は、「赤いハゲタカファンド」とも「赤いファンド」とも、全く関係がありません。私の希求する勝手な国際的な仕組みつくりとも関係ありません。

ただ、一市民として、「共有の森ファンド」に、社会の関心が集まりさえすれば、似たような機能を持たせることができるのではないかと、勝手な期待が膨らんでしまうのです。

http://www.tobimushi.jp/

個人的には、国際的な水資源の共有化の仕組みをつくっていく選択肢もあるのではないかと、真剣に考えています。 「赤いファンド」のような極端な発想ではなく、「グリーンファンド機構」、あるいは「国際ウォーター管理機構」みたいな新たなスキームはできないものかと・・・。


いずれにしても、林野行政や世論は、まだ、森や水に関わる事態の重要性について充分な認識が進んでいないように感じます。 あるいは、気付かないフリをしているのでしょうか。

様々な事態を想定しつつ、できることを速やかに。
霧が立ち込め、未だその山容を露にしない今朝の相模湖の石老山を前に、 寝た子を起こすような刺激的なニュースが必用なのだと痛感しました。

PR通信社 イーネット・ブレーン

その先を目指すコミュニケーション戦略
http://www.enb-inc.jp/

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