2009年5月8日金曜日

ポストモダニズムの産業論

坂本龍一のソロアルバム「Out Of nOise(タイトルタポグラフィー ママ)」をしばらく聴き込んでいます。特に12曲めのピアノ曲「composition 0919」は気に入りました。

この曲は、右手の高音部と左手の低音部で響く、崩壊すれすれの二つの和音と、不思議な緊張感を作り出す、奇数の連符、ポリリズムのバリエーションで、畳み掛けられていきます。

ポリリズムのバリエーションは、一拍三連から一つ置きにアクセントを付けて、アクセント以外を休符にして、二拍三連に。あれよあれよという間に、一拍五連や二拍五連がでてきて、分けがわかんなくなったところで、再びインターバルの長いポリリズムに収斂しながら、最後は独立した和音の残響音がのこる構成です。
楽譜で確認していませんが、だぶんそうだと思います。

途中でややヒステリックなタッチで音が飛び出してくるものの、リズムそのものは、きわめて繊細で、抑制が効いています。
http://www.youtube.com/user/commmons

もしかしたら、神経を逆なでするように感じる人もいるかもしれませんが、次第にリズムのグルーブ感に陶酔できます。
ほんの少しのアルコールが入っていれば、すぐに飛べます。

この曲は、現代音楽的な自由さが印象的だという評価が多いようですが、
それだけでなく、日本的なリズムと、アフリカ系のファンキーなリズムがミックスされているところに面白さがあると思いました。

日本的なリズムと、アフリカ系のファンキーなリズム、この二つを見事につなぎ合わせた分かりやすい例があります。北野武監督の映画「座頭市」です。

映画のトップシーンで、数人の農夫が鍬(くわ)で田んぼ耕す場面が出てきます。
鍬の音がフェイドインして、振り下ろす鍬の動きと音がシンクロするところです。

鍬を振り下ろすリズムは、大工が使う木槌のリズムに引き継がれ、 エンディングのタップダンスのファンキーなリズムへと展開する、伏線になっていました。

ファンクキーなブラックミュージックの源流は、そもそも、アフリカ人奴隷の綿花の摘み取り作業をしたときの野良歌から来ているという説があります。
現在記録に残ってる古い歌詞に、My Dady rocks me with steady roll. というのがあって、これがR&Rの語源になっていると唱えている専門書を見つけました。

意訳すると「私の旦那は、私に、ぐりぐりしながら、ピストン運動をする」という下ネタです。このrock(揺らす)とroll(転がす)の頭文字をとってR&Rとなったという説です。

同じ農作業から発生したリズムでも、肉体に直結するブラックミュージックのファンキーなリズムと違って、日本のリズムは、もっとフェティッシュです。労働に関わる道具そのものに対する、少し屈折した愛情を感じます。

坂本龍一は、まるで、鍬(くわ)を振り下ろす農夫のごとく、木槌で家の柱のほぞを組む大工のごとく、心地よくピアノを弾くのです。

日本のモノ作りの強さの源流は、道具に対する深い愛情にあるのかもしれないと、ふと思いました。

以下、もう一度、お聴きください。
http://www.youtube.com/user/commmons

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