2009年2月17日火曜日

日本と産油国(2)

確か去年の夏のこと。
クウェート政府がフィリピンやミャンマーなどアジアの8カ国に
合計270億ドル(約3兆円)以上を投資することを決めたと
日経新聞が報じていました。
主に政府系ファンドのクウェート投資庁を通じて、
食糧確保のために農業関連に投資するという内容でした。
先月、そのクウェートが日本との間で合意に達した
租税条約締結の流れとあわせて今、感慨深いものがあります。

感慨深さの原因は、実は落第ぎりぎりで卒業した
高校生の時の記憶にあります。
脳梗塞でいつも調子が悪くて、
3回に1回は休講になっていた世界史の先生の授業。
いつもメソポタミア文明しかやらないけど唯一眠くならない授業でした。
ヒントを出しながら、地図帳でマニアックな地名を探させて、
早いもん順に教壇で採点、正解者は順に
「カルチェラタン」という喫茶店にしけこんでいました。

ビールを片手に久しぶりに地図帳を開いてみました。
イラクとそのお隣りに位置する
ぺルシャ湾岸の小国クウェート辺りは、
紀元前3500年頃に栄えたという
かの有名な「メソポタミア文明」発祥の地。
世界初の百科事典や世界初のビール、
バベルの塔やノアの箱舟のモデルも
この地の文化から誕生したものです。
そして、ティグリス、ユーフラテス川の間の肥沃な大地では
農業が営まれていました。

当時、この農業生産性がずば抜けて高かったといいいます。 
たとえば1粒の麦を播いて、
20倍から80倍の収穫があったとうから驚きです。 
5000年たった現在でも、ヨーロッパで15倍、アメリカで23倍。
この驚異的な生産性で都市住民の胃袋を満たし、周辺の地域に輸出、
シリアなどからは杉を輸入していました。

ところが、旧約聖書やギリシャ神話にも影響を与えた
「ギルガメシュ叙事詩」の研究によると、
当時のシュメール人が灌漑農業を無理に 進めたため、
塩害が広がって耕作地が砂漠化したといいます。
シリアの森も切りつくされ消耗したと・・・。

宮崎駿のアニメ映画『天空の城ラピュタ』の舞台は
シリアの町だといわれていますが、シリアの森も
『もののけ姫』の舞台になっているという人もいます。
通説では『もののけ姫』の舞台は
屋久島の白谷雲水峡だといわれていますが、
僕は世界各地の世界史レベルから日本固有の文化に落とし込む発想が
宮崎アニメに潜んでいてもおかしくないと思います。
農業と林業の交易について良書があれば是非教えてほしいです。

つまりメソポタミア文明は、
第一次産業の資源蕩尽の結果、滅んでしまったというお話です。

現在ではクウェートに限らず、
中東の産油国の多くは、既に石油の枯渇を見越して、
農業資源の確保に走っています。
バブルがはじけたドバイでも農業に強い関心を持っているのは
農業技術通信社の浅川さんや昆さんがリポートして、
サンデープロジェクトでも特集されたとおりです。
(ちなみに浅川さんは小池百合子の後輩、カイロ大学出身)

さらに、アメリカの大富豪の投資先が
既に世界中の農地になっていることは皆さんご存知でしょうか?
これも農業技術通信社が月間「農業経営者3月号」で報じています。
この傾向はますます活発化していくでしょう。
第一次産業に関わる資源をコントロールできる技術者や企業が
富を得る時代がやってくると言うわけです。
日本人は身の回りにある自然環境と第一次産業に関わる技術に
もっと自信を持ったほうがいい。
NGOや民間任せではなく、組織的な国家戦略としても
人材を育成しないともったいない。
第二の都市鉱山を有効活用することも大切ですが、
第一次産業の宝の山が日本国土を覆っているんだから・・・。

産油国は代替エネルギーだけでなく、
第一次産業の強い国との関係強化を望んでいます。
“第一次産業に強い日本”を世界に発信することが、
エネルギー安保にも食糧安保にもつながり、
しいては世界の安定にもつながるかもしれない。
憲法第9条も、そのまんまでもいけるんじゃないか。
「美しい国日本」なんて抽象的で全然わからない。
「グリーンニューディール」なんていまさら当たり前だろう。
日本の本当の経済的価値を右翼も政治家も
理解していないんじゃないか。

ま、しょうがない・・・その辺は潔くあきらめましょう。


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