●プロローグ
東日本大震災と巨大津波によって甚大な被害を受けた地域では、
地震、津波、原発事故、政府の対応の遅れなど、三重四重の苦難に直面し、
現在も昼夜を問わず復旧・復興に向けた取組が懸命に続けられている。

<津波によって破壊された宮城県気仙沼市の市街地>
しかし、東北地方の復旧・復興問題は、単に当該地域だけの問題ではない。
北関東や東北地方には、国内外の自動車メーカーや家電メーカーを支える
高度な技術力を持ったものづくり企業が集積していたため、
その影響は国内に留まらず、
国際的なサプライチェーンさえも揺るがしたことは記憶に新しい。
サプライチェーンの寸断によって打撃を被った産業分野は、
製造業や流通・サービス業だけではない。
第二次産業、第三次産業以上に、第一次産業は深刻な事態に陥っている。
東北地方の沿岸部の多くは、
豊かな農林水産資源を育んできた自然環境に恵まれた地域である。
無数の入江によって複雑な海岸線を形成しているリアス式海岸が続く三陸海岸は、
すぐ背後には山が迫り、水産加工工場や農地が点在していた。
そこに津波が押し寄せた。

<未だに瓦礫の山が仮置きされている>
農林水産省によると津波で流出・冠水した農地面積は
青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県で東京ドーム5000個分の
2万3600haと推計されている。
また、内閣府は、損壊した道路、住宅、農地などの直接的な被害額が
16.9兆円にのぼるとの推計を発表した。

<岩手県陸前高田市。津波は山沿いの民家にまで及んだ>
これは1995年の阪神・淡路大震災の9.6兆円と比べると
約1.8倍の被害額である。
特に農林水産関係の被害は4倍に膨らんでいるのが特徴的である。
農林水産省から発表された資料によると、
ビニールハウス等の農業施設だけでも破損は360ヶ所、
27億6400万円と集計している(7月12日12時時点)。
しかし、農地への対策は後回しにされているのが現状だ。

<被害を受けたビニールハウス>
今回の大震災は、ハード面だけでなくソフト面でも深刻な影を落としている。
この地で脈々と受け継がれてきた東北地方独自の風土や文化に裏打ちされて育まれた
コミュティーの一部が分断されてしまった。
縄文時代以来の自然との向き合い方、
平安時代に奥州豪族の藤原氏が築いた地域社会文化、
そして江戸時代から引き継がれてきた職業人たちの知恵など、
日本人の精神的な拠り所に揺さぶりをかけた災害だったという問題意識が
広がり始めているのである。
そんな中、中小ベンチャー企業による復興策が活発化している。
中には、すぐに現地で雇用を生み出し、
新たな地域経済の復興を実現しようとするプロジェクトも急浮上している。
その鼓動は、この夏に相次いで東京で開催された2つのイベントで話題となり、
大きなうねりになろうとしている。
一つは社団法人農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)と農林水産省が主催した
「アグリ技術シーズセミナー」(6月20日開催)であり、
もうひとつは農業技術通信社が主催したビジネスモデルコンテスト
「A1グランプリ決戦大会」(7月1日開催)である。
前者はハード面での民間技術の新たな可能性を世に問う研究者や中小ベンチャー企業が、
後者はアグリビジネスをソフト面から捉えた生産者が中心となるイベントだった。
東北地方の復興を巡り水面下で進むプロジェクトの深層を追った。(つづく)
PR通信社 イーネット・ブレーン
その先を目指すコミュニケーション戦略
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